2008年08月22日

スウェーデンの実態(上)

・・・略・・・
 理想的福祉の国スウェーデンというイメージをぶっとばすような、衝撃的な本が出た。武田龍夫『福祉国家の闘い』(中公新書)である。この本にはスウェーデンの現実 (本当の素顔) が豊富な資料と体験に基づいて明らかにされている。その結論は「モデル福祉国家としてのスウェーデンの歴史的役割は終わった」それは「砕かれた神話となった」である。

 第二章「福祉社会の裏側──その光と影」の冒頭には、次のようなエピソードが紹介されている。

 「一世紀を生きてきた老人 (ちなみにスウェーデンの100歳以上の老人は約700人。もちろんほとんど女性である。1998年) に大学生が尋ねた。「お爺さんの一生で何がもっとも重要な変化でした?」と。彼は二度の世界大戦か原子力発電か、あるいはテレビ、携帯電話、パソコンなどの情報革命か、それとも宇宙衛星かなどの回答を予測した。」

 しかし老人の回答は彼の予想もしないものだった。

 「それはね──家族の崩壊だよ」。(同書、27頁)

 この一言に高福祉社会の問題が集約されている。老人の介護はいかなる時代でも家族の中で行われてきた。しかし今は女性たちが外で働くようになり、家の中の仕事はすべて「公的機関」が引き受けている。すなわち乳幼児の世話をする託児所、学校での無料給食、老人の面倒をみる老人ホーム。

 この男女完全平等と女性の社会進出、高福祉による公正で平等な社会を目指した実験は、現実には何をもたらしたか。

 まずたいへんなコストがかかることが判明した。最初から分かる人には分かっていたことだが、公的機関の建物を建て、維持する費用、そして人件費をまかなうためには、高額の税金を必要とする

林道義のホームページ

 高齢者の介護は家族だけでは看きれないという場合もあります。また、家族が看るよりも施設(施設にもよりますが)で見たほうが高齢者自身のQOL(生活の質)向上に資する場合もあります。個別的な家庭の事情は配慮する必要があるし、介護が必要である高齢者を他人であるヘルパーが介護することを否定するものではありません。
 しかし、100年以上を生きたスウェーデンの高齢者の「一生で何がもっとも重要な変化」、「家族の崩壊」であった。このことに対して我々は真摯に向き合わなければなりません。
 かつて家庭で解決していた問題をアウトソースする。それはいい面もあるが、結果、「家族の崩壊」を招いたのでは、何のための福祉であるのでしょう。
・・・中略・・・
 家庭教育は軽視され、子どもは早くから自立を強制される。H・ヘンディン教授の報告書によると、スウェーデンの女性は「子どもに対する愛着が弱く、早く職場に戻りたがり、そのために子どもを十分構ってやれなかったことへの有罪感があるといわれる。つまり彼女にとっては子どもは楽しい存在ではないというのである。幼児のころから独立することを躾るのも、その背景からとするのである。しかし子どもにとって、これは不安と憤りの深層心理を潜在させることになる。男性の自殺未遂者の多くは、診問中母のことに触れると「とてもよい母だった」と言ってすぐに話題を変えるのが共通だった」。ヘンディン教授は「母性の希薄さを中心に生まれる男女関係、母子関係の緊張という心理的亀裂ないし深淵」を指摘している。(同書、128〜129頁)

・・・中略・・・
 こうした恐ろしい現実の背後にあるのが、家庭の崩壊である。「スウェーデンでは結婚は契約の一つだ」「離婚は日常茶飯事」で「二組に一組」が離婚し、夫婦のあいだには「思いやりとか譲歩とか協力とか尊敬といった感情は、まずない。だから夫婦関係は猛烈なストレスとなる。」だから「男と女の利己的自我の血みどろの戦いが、ストリンドベルイ文学の主題の一つとなった」。(同書、146〜147頁)

同サイト

 高福祉といわれるスウェーデンですが、実態は老いた親の面倒を見たくない、子供の面倒を見たくない、家庭よりも自分たち個人の自由が大事だという”利己的自我”の蔓延り、家庭が崩壊した状態です。だからこそ高福祉高負担の社会政策をとり国家が崩壊した家庭を補完しようとしているのでしょう。しかしながら、家庭という個別的な存在の役割を国全体を統治する国家が担うことができるのか。

 「福祉国家」といいながらスウェーデンでは、「個人の自由」「個の確立」という美名のもとに、その弊害となる高齢者の排除、子供の排除を行っているのではないでしょうか。「個人の自由」の弊害となるものは国家が福祉というものの名のもとに尻拭いする。
 自殺が増えていることも、急増する犯罪が「犯罪の実態はまさに質量ともに犯罪王国と呼ぶにふさわしいほど」というのも、「個人の自由」を求め、国家に高福祉を求めた結果です。犯罪の増加は、家族が崩壊し、子供たちが自由を求める親から排除された結果であると思うのは、私の印象にすぎないかもしれません。
 しかし、自殺や犯罪が高福祉の国には似つかわしくないものです。少なくともスウェーデンの福祉国家モデルは綻びをきたしているのではないでしょうか。

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posted by つるり at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・経済・福祉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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